やってみて!ことばの成長のためにお家でできることはこれ。

KIKO

こんにちは KIKOといいます
児童発達支援や放課後等デイサービスで言語指導もしています

前回は、ことばの遅れとはどういうことなのか、どんなケースがあるのか、どのような原因が考えられるのかなどについてお伝えしました。

前回のお話はこちらです。

ことばの遅れがありますと言われたら?まずはどういうことか知ることからはじめよう。

今回は、ことばの遅れに気づいたらどうすればよいのか、ことばを伸ばすためにお家でできることをお伝えしていきます。

ことばを伸ばすためにお家でやってみて!

さっそくお家でできるやってみてほしいことをお伝えしていきます。
どうぞ!

たくさんからだを動かそう!

ことばは呼気(こき〈吐く息〉)と一緒に口から出てきます。声を出すにはある程度の肺活量が必要です。また、唇や舌、口の周り、のどの筋肉の動きや力が弱いとはっきりとしたことばになりません。
でも、口と舌の筋肉だけを鍛えようとするのではなく、からだ全体の筋肉をつかってからだ全体の動きをよくして自分で自分のからだを自在に動かす力をつけていくことが大切です。
走る、跳ぶ、つかむ、のぼる、押す、まわすなど、からだを大きく動かし、つまむ、まるめる、めくる、入れるなど、小さな動きも体験し、吹く、吸う、噛む、ふくらます、なめる、唇をとがらせる、大きく口をあける、鼻水をかむ、うがいをするなど、口のまわりのたくさんの動きを繰り返すことが大切です。

口を動かすおすすめの方法は?
口をつかった遊び

ことばの発達を促すと聞くと何かお勉強ぽいことを想像するかもしれませんが、子どもの力を伸ばすものは遊びや日々の生活の中にあります。

  • しゃぼん玉あそび
  • ラッパを吹く
  • 吹き戻し
  • あっぷっぷ
  • 変顔をつくる
  • 丸めた紙をフーっと吹くだけでも

こんなことが口を動かすよい体操になります。

  • ストローで吸う
  • 熱いものをフーフーする
  • ろうそくを吹き消す
  • ぶくぶくうがいとがらがらうがい
  • 唇についた食べ物をペロっとなめる

日常の中にも口や舌を動かす機会はたくさんあります。

これまでもやってきたよ、ということを少し意識して回数を増やすだけでも動きの刺激になりますよ。

会話をしよう!

ことばは他者とのやりとりの中で成長していきます。
たったひとりでひとりごとをつぶやいているよりも、自分のことばに誰かがこたえてくれてそのことばにまた自分がこたえていくことで、様々な感情とともにことばが成長していきます。

何かを伝えたい気持ち、伝わった嬉しさ、満足感、伝わらないもどかしさ、言いかえてみる工夫、尋ねられたことにこたえること、伝えられて気づく新しいものごと。

誰かと会話することは子どもだけでなく大人も成長させてくれます。

テレビを消し、スマホを置いて会話をしてみましょう!

子どもと会話するときに気をつけること

お子さんと会話するときにはこんなことに気をつけてみてください

3秒くらい待ってみる

ことばが耳に入り理解できるまで、言いたいことが口から出てくるまで少し時間がかかります。すぐにたたみかけないで1.2.3かぞえるくらいは待ってみてください。

こたえを先取りしない

お子さんが何か言おうとしているとき、お水が飲みたいのね、おもちゃを取ってほしいのね、チャックをしめてほしいのね、と言いたいことに気づいたとしてもじっとがまん。お子さんが自分で言うまで待ってみてください。
子どもはすぐに状況に適応します。言いたいことをママが言ってくれると学習したら、一生懸命お話することではなく一生懸命アピールするようになってしまう子もいます。

「うん」と「ううん」でこたえられる問いかけをしてみる

「今日保育園で何をしてきたの?」「わからない。」
「給食は何だったの?」「わすれちゃった。」
お子さんから何も聞き出せないときは、「うん」「ううん」でこたえられる質問をしてみて。
「今日お友だちの〇〇ちゃん保育園に来ていた?」「うん」
「給食は残さないで食べた?」「…ううん」
「残しちゃったの?」「うん」
上手に質問していくと予想以上に聞き出せるはず。
慣れてきたら、次は「今日はお外遊びした? してない?」などの二択の質問へ進みましょう。

どうして?と尋ねない

物事や自分の言動と何かほかの物事との因果関係、原因と結果がしっかりわかっている子はそんなにいないはず。いたずらしたから叱られちゃった、ということでさえショックで信じられないのが子どもです。
どうしてなのか、理由を上手に話せるようになるのは小学生になってからかな、と私は思っています。
「今日幼稚園行きたくない。」「どうして?!」
「コレ、食べたくない。」「どうして?!」
「イヤイヤイヤ!」「どうして?!」
「どうして叩いたの?!」
どうして?と尋ねても本当の理由を伝えられない子がたくさんいます。
会話の中では「どうして?」をやめて「あらそう?〇〇だからかな?」「そうね~、ママもイヤ。」「叩いちゃったね。〇〇ちゃんかわいそう。ごめんねしよっか。」話を先へ進めることをお勧めします。

短い会話を繰り返す

私が新米先生だったころ気をつけるように言われたことは、
「子どもへの質問や指示は3歳児で一つ、4歳児で二つ、5歳児で三つまで」というものでした。
お外遊びから園内に戻る際3歳児には「靴はちゃんと自分の靴箱に入れてください。」
4歳児には「靴をしまったら石けんできれいに手を洗ってください。」
5歳児には「靴をしまったらきれいに手を洗って、おへやに戻ったらスモックを着てください。次は製作です。」というような指示を出すといった感じです。
年齢が低かったりことばが遅れている子は一言の中に情報がいくつも盛り込まれていると、全部を覚えていることができません。
長いお話ではなく、短いほんの一言を繰り返して会話していくようにしてみてください。

子どもが見ているものの名前を伝える!

例えば動物園で
「ほら〇〇くん!みて!ゾウ!ゾウさんよ!」
と、一生懸命伝えているときお子さんが足元のアリを見つけてじっとみているところだったら…?
ゾウを見てほしいところですが
「あら。アリさん見つけたの?たくさんいるね。」
が正解です。(きっとこの後ゾウさんも見てくれたはずです。)

小さなお子さんが色々なものに興味をもってゆびさしをたくさんする時期、ママに何かを伝えたくてたまらない時期、行動範囲が少しずつ広がってあちこち探検する時期、そんな時期には大人が伝えたいものよりも子どもがその時見ているものの名前や動きの名前(走ってるね、飛んでるね、寝ているねなどの動詞)様子をあらわすことば(大きいね、赤いね、速いねなどの形容詞)を伝えることを意識してみてください。

手あそび・うたあそびを楽しもう!

なかなかことばが出ないお子さんでも手あそびやうたあそびを楽しむうちにメロディにのせてことばが出てくることがあります。
また、子どものうたは知らず知らずのうちに「助詞」の練習になるものがたくさんあります。
「~が」「~の」「~を」「~に」「~と」などの助詞は「ごはん(を)食べる」「おふろ(に)入る」など日常の会話の中で省略されてしまうことも多く、小学生になってから国語の勉強の中でつまずく子も多いです。
知っている子どものうたを2~3曲口ずさんでみてください。
しっかりはっきり助詞が出てくるはずです。
子どもはうたが大好き。
ぜひお家で一緒にうたってみてください。

やっぱりこれ。絵本を読もう!

単語を知る、会話のお手本、楽しい繰り返し、膨らむイメージ、感性や感情を豊かにするなど絵本は子どもの内面からことばの成長を促してくれます。また、ことばの伸びのためには「話す力」の成長とともに「聞く力」の成長が不可欠。聞く力の成長のためにも絵本をたくさん読みましょう。

しない方がよいこと

やってみてほしいことがたくさんありますが、やってほしくないこともあります。

大人が赤ちゃんことばを使うこと

「はい、おくちゅですよ。おくちゅはきまちょうね。」
などと、大人が赤ちゃんことばでお子さんに話しかけている場面を見かけることがありますが、やめたほうがいいです。正しい発音ではなしかけてあげてください。

言い直しさせること

「ちがう。ジョウ、じゃないでしょう。ゾウ! もう一回言ってごらん。」
言ってごらん、と言われて言えるなら苦労はしません。言い直しはさせない方がいいでしょう。ことばは相手の嬉しそうな楽しそうな反応があって発達していくことを忘れないでください。

どうせわからないと考えること

ことばがなかったり遅れていると、言ってもわからないだろうと考えお子さんに説明やお話をしないことがあります。でも、話しかけることこそ大事なこと。言っていることが全部わからなくてもわかる部分もあるかもしれません。また、ことばだけでなく話している人の声の感じ、表情などから情報を読み取ることもことばの成長には欠かせません。どうせわからない、と考えず話しかけてくださいね。

お家でやってみたけど心配なとき

お家以外の力が必要なケースもあります。

受診が必要な場合

知的障害や自閉症スペクトラムなどなんらかの障害がことばの遅れの原因となっている場合もあります。もしも障害が原因であれば、受診によって気づかなかったことば以外の問題も見つけてもらえるかもしれません。
1歳6か月児健診や3歳児健診で医療受診を勧められた場合は受診を検討しましょう。
何科を受診したらよいかわからない場合は保健師さんや、かかりつけの小児科の先生に相談してください。小児精神科や小児科発達外来を受診するのがよいのですが、予約が必要だったり病院によっては紹介状が必要な場合もあります。

STの指導を受ける

国家資格のST。言語聴覚士さんのことです。
ことばやきこえの障害に対応して指導、助言、リハビリを行う専門家です。病院によってSTさんのリハビリを受けることができる場合があります。小児精神科や小児科発達外来の他、耳鼻咽喉科に常勤されている場合や、病院以外にも療育センターですとか放課後等デイサービスに勤務されている場合もあります。いずれの場合も直接申し込むのではなく、受診や相談をしたうえでリハビリを検討していくことになると思われます。順を追って進んでいきましょう。

学校のことばの教室・聞こえの教室に通う

ことばの教室・きこえの教室というのは、学校の「通級指導教室」のひとつで、地域のいくつかの小中学校に設置され教員がことばの指導を行っています。教室に常時在籍するわけではなく通常学級に在籍しているお子さんが曜日や時間を決めて通うので「通級」といいます。他校の児童も通いますし、地域によっては小中学生だけでなく幼児の指導も行っています。教員が幼児の指導を行う場合もありますし、幼児の指導は教員ではなく嘱託職員が行っている地域もあります。STの資格をもった担当者は少ないかもしれませんが、特別支援学校教諭免許をもっていたり研修を受けた担当者がことばの状態をチェックして指導を行ってくれます。授業の一環として指導行われる場合は料金はかかりませんが教材費がかかる場合はあるかもしれません。
詳しく知りたい方は、地域のことばの教室に直接問い合わせるか地域の教育委員会に問い合わせてみてください。

民間のことばの教室の利用

民間の「ことばの教室」も存在します。STさんが開業しているケースが多いかもしれません。こちらは料金がかかりますが、指導を受けたいSTさんに直接指導を依頼できる点がメリットといえると思います。

療育機関でことばの指導を受ける

療育センターや療育園と呼ばれる施設、放課後等デイサービスや児童発達支援などの「療育機関」でもことばの指導を受けることができます。
療育を受けるためには「受給者証」を発行してもらうことが必要です。受給者証は地域の市区町村の福祉課やこども課など、福祉や母子に関する課や保健センターなどが窓口になっていると思いますので各自お問い合わせください。
放課後等デイサービスや児童発達支援は、言語指導に力を入れている、運動に力を入れている、音楽療法に力を入れているなど、それぞれ得意分野があると思いますのでパンフレットや各ホームページで特色を調べてみたり地域の相談支援事業所に問い合わせてみるとよいと思います。

おわりに

今回は2回にわたってことばの遅れと成長についてお伝えしました。
ことばの遅れは、子育て中に心配や不安の原因となることが多いです。でも、ことばの発達は個人差が大きく相談することを迷ってしまったり、もう少し待ってみようかなと考えているうちに遅れが大きくなってしまうこともあります。
お伝えしたやってみてほしいことで、ことばの伸びを実感したり力を借りるために一歩踏み出すことができたらよいなぁと思います。

子育てがんばりましょう。