KIKO
KIKOといいます
児童発達支援管理責任者というお仕事をしています
児童発達支援管理責任者の業務に保護者の方々や学校や幼稚園保育園の先生方との面談があります。
面談の中でお子さんの「集中力のなさ」は、本当によく話題に上ります。
小さいお子さんを持つお母さんからは
- ひとつのおもちゃで長く遊べない
- おちつきがなくチョロチョロする
- ごはんを食べる時ですら途中であきている
小中学生のお子さんについては
- いつまでたっても宿題が終わらない
- 勉強に集中できない
- そもそもやらなければならないことをやりはじめない
学校、幼稚園、保育園の先生方からは
- クラス全体がザワザワして落ち着かない
- ひとり落ち着きのない子がいるとつられてしまう子がいる
- 落ち着かないわけではないのにボーっとして話を聞いていない子がいる
などのお話をよくうかがいます。
そして、発達障害の診断を受けていたり疑いがあるお子さんを持つお母さんや受け持っている先生たちにとって
- 多動傾向がある
- おしゃべりがとまらない
- ちょっとしたことですぐに気が散ってしまう
などのお悩みは生活の中に常についてまわります。
日々どうしたらいいのかな、と考えておられるのではないでしょうか。
保育・教育・療育現場の先生たちはどのように対応しているのでしょう。
今回は子どもたちの集中力についてのお話とやってみてほしい対策を、小さいお子さんを持つお母さん、小中学生を持つお母さん、新人の先生方など子どもの集中力について興味がある皆さんにお伝えします。
そもそも子どもの集中時間ってどのくらいなの?
子どもが集中できる時間については色々な意見がありますが、おおよそ入学前の幼児は年齢+1分程度小学生以降は年齢+2分程度と言われています。
つまり、4~5才児で5~6分くらい、10才で12分くらい、15才で17分くらい ということになります。
意外と短いのです!
勉強や工作、食事や好きな遊びでも、子どもの集中は思ったよりも続かず、それ以上同じことを続けているとあきてしまって投げ出してしまったり、お友だちやきょうだいとケンカが始まったり、おふざけが盛り上がりすぎて大騒ぎになってしまうこともあります。
「うちの子、全然集中が続かない…どうしてなの!?」と悩んでいたお母さん、もしかしたらお子さんの集中力は平均的だったのかもしれません。
「え? 学校の授業は、45~50分あるよね?」
「ゲームやスマホはいつまでもやってる!」
そうですよね。みなさんそう思われると思います。
実はこの学校の授業やゲームの中に集中力のヒントがあるのです。
集中力を保つものってあるの?
授業やゲームには、集中力が途切れそうになった時につなぎとめてくれるものが存在しています。
それは「新しい刺激」です。
45~50分間ずっと話を聞き続けるですとか、ずっと書き続けるですとか、ずっと同じことを続けるという授業は多くはありません。
学校の先生方は、話を聞く、書き写す、考える、手を上げさせる、発言する、教科書を読む、できたものを歩いて持っていく、隣の人やグループの人と話し合う、などなど「見る」「きく」「はなす」「考える」「動く」といった、たくさんの違った刺激やからだの動きが短時間で入れ替わるように授業を組み立てているのです。
幼稚園や保育園の先生方はどのように活動を組み立てているのでしょう。
幼稚園や保育園の一日の中には、からだを動かす「動的活動」と集中して行う「静的活動」がバランスよく組み込まれています。そして、「動的活動」の中「静的活動」の中に、さらに「は~い!」と手をあげたり、歌ったり踊ったり、手遊びをしたり、「し~っ」と静かにしたり、隠れたり、走ったり、笑ったり、どきどきしたり、シールを貼ったり…といった数え切れないほどの小さな刺激やさまざまな動きが詰め込まれているのです。子ども向けの音楽に合わせて行う体操の中にも、たいてい「わ~っ」と動き回る場面と、止まったり座ったりする場面がそれぞれ入っていますよね。
ゲームやスマホはどうでしょう。
次々と目や耳からおもしろおかしくドキドキするような強い刺激が続きます。
勉強や食事中、ひとりで少し遊んでいてほしい時、公共の場で何かを待つ間、乗り物に乗って移動中、長いお話を聞かなければならない時など、集中してほしい場面に強い刺激は見あたりません。次々と新しい刺激も現れないでしょう。
そんな刺激のない状態のとき、もしも何かおもしろそうな音が聞こえたら?
もしも何かおもしろそうなものが目に入ったら?
たちまちそちらに「集中!」してしまうのはあたりまえのこと。
「気が散る」という状態は、実は「集中先が変わっただけ」だったのです。
発達障害をもつ子も集中できるの?
発達障害をもつお子さんをみていると、まわりのお子さんに比べて気が散りやすいと感じることが多いと思います。でも、時には興味のあるものに時間を忘れて集中するお子さんもいらっしゃるでしょう。
発達障害といっても、ひとりひとり得意不得意は違いますのでみなさんにあてはまるとは言えませんが、どんなタイプのお子さんでも特性を知って集中のお手伝いをしていくことが大切です。
発達障害を持つお子さんが集中できない理由は以下のようなものがあります。
- 目に入るたくさんの情報を全部とらえているため、どこを集中して見ればよいのかわからない
- ある1点を集中して見てしまい、他のことはまったく目に入っていない
- 耳に入るたくさんの音や話声を全部聞き取ってしまい、その結果全部を中途半端に聞いている
- 一番大事なポイントではない音や声を聞いている
- 人よりも物に興味があるため人の顔や話になかなか集中できない
- 感覚に過敏な部分があり、気になる音や光、暑さ寒さが苦痛で集中できない
- みんなは気にしていないものなのだが、怖くてたまらないものがあり集中できない
- 動きたい衝動がおさえられない
- 読んでわかる、聞いてわかるまでのスピードが遅いため集中に時間がかかる
- すぐに空想の世界に入り込んでしまって抜け出せない
色々あります。
この中のどれかに当てはまるお子さんもいるでしょうし、複数当てはまるお子さんもいるかもしれません。そして、発達障害と診断されていないお子さんの中にも、これらの理由が当てはまるお子さんがいるはずです。
これからお伝えするやってみてほしい小さな対策は、小さなお子さんも、小中学生も、発達障害をもつお子さんも、もたないお子さんも、できそうなところからどんどんためしてほしいと思います。
集中力UPのコツ、やってみて!
それでは、具体的な方法です。いくつかの年齢ごとに見ていきましょう。
小さなお子さん向け
まずは小さなお子さん向けにためしてほしいコツです。
食事の時は?
- 食事中はお子さんの視線の先に気になるものがないように座らせます。食べ物に集中するためです。先に食べ終わったきょうだいや幼稚園保育園ではお友だちの姿が目に入ると食事には集中できません。座る位置は大切です。
- 食べさせてあげるとき、お子さんにも何か持たせる。お子さんが手づかみで食べられるものでも良いですし、小さなスプーンでも良いです。食事と関係のないものは持たせないほうがよいです。「自分も何かやってる!」というやる気や自尊心が集中力を手助けします。
- 食べさせながら、食べているところを見せます。「おいしい!」と言いながら何か噛んでいるところを見せたり、口をもぐもぐさせて食べているふりを見せるだけでもOKです。小さいお子さんは、人の動きや様子を観察するのが大好き。注目してくれます。
- 一人で食べられるお子さんは、スプーンを使う、フォークを使う、おはしを使う、手を使う(皮をむく作業やふたを開けるピックでつまむなど)のように、途中で食べ方が変えられるようにする。同じ動作が続いてあきてしまうのを防ぐためです。ただし遊び食べに注意です。食べることに集中できないようでしたら種類を減らしましょう。
「自分でふりかけをかける」なども集中には良い対策、こぼしてしまっては親子ともどもテンションが下がりますので少量うつわに入れておき、スプーンやゆびでつまんでふりかけるのも一つの方法です。
長く楽しく遊んでほしい
- おもちゃはいつでも何でも遊べるようにせず、ローテーションで出してあげたり、いくつかは手の届かないところにしまっておくのがおすすめ。出したときに新しい刺激となってくれます。
- ブロック、おままごとの道具、ごっこ遊びの材料の一部をママが預かっておく。たとえばブロック遊びにあきた頃「そうだ、タイヤもあるよ~」と後出しするとそこから再度遊びが発展することがあります。
- 雑誌の付録や100円ショップの小さなおもちゃはここぞというときのためにいくつかキープしておく。初めて遊ぶものは興味も刺激も新鮮です。
- 遊びの途中であえてお手伝いを頼む。「ちょっとここにきて、これを押さえてくれない?」など小さなことで良いです。遊びを中断されたことで気分が変わり、戻ってもう一度飽きずに遊べることがあります。
声がけのコツ
- 声をかける前にまず名前を呼ぶ。自分の名前は一番多く耳に入ることばなので、子どもにとって「じぶんの名前」という意味を持つ他に、とても親しみを感じることばといえます。呼ばれたから「なあに?」と振り返ることはもちろんですが、「あ、聞いたことのあることばが聞こえたぞ」とそちらに注目してみた、という場合もあります。それぞれの子の名前はそれぞれの子の集中力を高めることばなのです。名前を呼んで集中できたところで本題に入るとお話が耳に入りやすくなります。
- 気持ちがもり上がりすぎる前に一休み。笑いすぎ、泣きすぎ、騒ぎすぎ、すぎてしまうと気持ちはなかなか平常に戻りません。すぎる前に名前を呼んだり、「これとこれ、どっちが好き?」と関係のない質問をしてみる、お水を飲ませるなど気持ちのきりかえを試みるとよいでしょう。
- 子どもはお話の声の大きさ、高さが変わると興味を持ちます。話しかけるときは大きめの声、小さい声、ささやき声など大きさの違う声を使い分けたり、一定の音程でなく高低をつけながらお話すると集中してお話を聞くことができることがあります。
集中の経験をつむ
- きれいな植物や小さな虫やどうぶつを、「きれいね」「かわいいね」などと言いながら一緒にじっくりながめる、絵本を読み聞かせる、簡単な折り紙を一緒に折るなど、大人がつきそって集中する時間をすごしてください。これは即効性のあるコツではなく、長期的に集中力を育てていくことにつながります。経験したことがないことは、ひとりですぐにはできません。大人に手伝ってもらって経験したことがひとりでもできることに変わっていきます。
- 長期的に頑張ってみてほしいコツをもうひとつ。集中できているときにほめる、みとめる。気になるときに叱ることよりもできているときに「できてるね」「みてるよ」のあいずをおくることで子どもはがんばれます。
小中学生のお子さん向け
続いて、小中学生のお子さん向けのコツです。
学習に集中するために
- 筆記用具を見直しましょう。鉛筆も消しゴムもできるだけシンプルなものを。色、形、香りは集中先となってしまいます。機能の多いペンケースも避けたほうが無難です。
- 机の上には何も置かない。お気に入りの写真やかわいいマスコット、趣味のグッズなどはぜひ視界に入らない場所に置いてください。
- 集中できる時間は10分少々。勉強中はタイミングを見はからって一声かけたりストレッチ、窓を開けて深呼吸、飲み物を飲むなど休憩をはさむようにしてみてください。
- 学習ドリルなどを用意するなら15分程度で終わるプリント式、5分程度で終わるミニドリルを3枚1セット、のように取り組むのが集中時間に合っています。休憩を挟んでもう1セット。2回目は教科を変えると刺激になります。
- 鼻が詰まっていませんか?鼻を上手にかめないお子さんは多いですが、ずっと鼻が詰まった状態だと集中はできません。そのまま寝ると熟睡できずに睡眠不足となりさらに集中力は低下してしまいます。しっかり鼻をかむよう伝えていきましょう。
おけいこごとの練習では
- まずは簡単な課題からやってみよう。「やる気」にもかかわる部分ですが、頑張るには報酬、ごほうびが必要です。ごほうびといってもおこづかいや物を買い与えるということではなく、達成感や充実感、認められたり褒められたりした快感、うまくいった実感などがごほうびとなります。「練習」は面倒でつらいことが多いですよね。課題をこなしごほうびを得た経験をすることが、その後の継続した頑張りにつながっていきます。集中や、やる気のためには簡単な課題でも良いのでうまくいった経験を積んでおくことが大切です。
- 時間や回数を決めましょう。子どもは時間や自分が行う課題や作業の量が「どのくらい」なのかはっきりと理解できていないことがあります。それらが自分にとって多いのかちょうどよいのか、どのくらい大変なのかたやすいことなのか、全く見当がつかない子もいます。「いつまで続ければよいのだろう」「あと何回?」「遊ぶ時間がなくなるかも」そんな気持ちで集中はできません。練習の前に、25分まで、とか、10分間、とか、10回頑張る、など終わりがはっきりわかるようにしておきましょう。
学校・幼稚園・保育園では
先生方もためしてほしいと思います。
経験を重ねた先生方はよくご存じの内容だと思いますが、新人の先生方はこのコツをぜひ試していただきたいと思います。
- 教室、保育室前方の先生が立つサイドには掲示物を少なめにするのが良いと思います。目から入る刺激(見えるもの)と、耳から入る刺激(聞こえるもの)では、目から入る刺激が勝ちます。興味をひく掲示物が目の前に貼ってあると先生の声が負けてしまうことがあります。掲示物は教室、保育室の側面の壁や後ろ側に貼ることをお勧めします。
- 集中がそがれてしまう視覚刺激は外しておきたいですが、説明するときに、見本や絵など目でみてわかるものを準備しておくと説明が届きやすくなることがあります。
- 年齢が低いと「みなさん」の呼びかけが、自分にも向いていると気づかないお子さんがいます。そんな子には全体へのお話のあとに「○○ちゃん」と個別に再度お話することが必要になります。同時に「先生が『みなさん』と言ったときには○○ちゃんにも言っているんだよ」とわかるまで時間をかけ何度も伝えてください。
- 授業、活動に入る前に集中のウォーミングアップを。学校によっては計算問題などに取り組んでから授業に入るところもあるようです。クイズを1問出す、手遊びを一つする、先生が出すじゃんけんに必ず負けるように後だししてね、とか、先生が口パクで何と言っているか当ててみて、など短時間でみんなが集中できることを試してみて。
- 子どもたちの名前は、興味をひくワードになります。名前を呼んで注意することよりも「ちょうど○○くんの服の色みたいに…」とか、「○○さんのやりかた、いいね」のように話の中に名前を入れるだけで集中できることがあります。
- 気が散りやすいお子さんは座席を前のほうへ。先生の声や合図が届きやすくなりますし、友だちから受ける刺激も減らせるので先生にとっても子どもにとってもプラスです。
発達障害をもつお子さんには
発達障害を持つお子さんたちには、それぞれのお子さんのタイプに応じた方法があります。
保護者の方にお子さんがどんなことが苦手なのかよくお話をうかがってほしいと思います。
- 不快に感じるものをとりのぞく。室温、音、光、服装、洋服のタグや顔にかかる前髪、空腹やのどの渇き、様々なものが集中をじゃましているかもしれません。不快の原因が何なのか自分でわかっていないお子さんもいます。様子をよく見て、あまり上手ではない訴えをよく聞いて不快の原因を取り除いてあげてください。
集中すると「暑い」と訴えるお子さんをよく見かけます。室内ですぐ靴下を脱いでしまうタイプの子たちです。脳が激しく活動したため熱を放出しようとしているかのようです。「暑くないよ」と言わず薄着にしてあげてください。
学校の音楽室や体育館が苦手な子は音の反響に耳を攻撃されているのかも。不快な音は頭痛を引き起こすこともあります。学校の先生方と相談して耳栓やイヤーマフ(ヘッドホン型の防音グッズ)を使用してみるのも良いかもしれません。 - 集中が必要なとき、思わずさわってしまうもの、思わず見てしまうものは見えないところに置いておきましょう。目に入るたくさんの情報を全部受け取ってしまうことのあるお子さんでも、目の前からなくなるととたんに気にならなくなることがあります。気になるものは、机の下に置いたり大きくて動かせないものは、布を一枚かぶせるだけでなかったことにできる場合もあります。かべや、ついたてがあることで、ぐっと集中できるお子さんもいます。できる範囲でためしてみてください。
勉強の時、よくやってしまうのが「消しゴムのカスを集めてこねてしまうこと」やってしまうお子さんには、消しカスが出にくい消しゴムを選ぶようにしてみてください。 - 「恐怖」は発達障害をもつお子さんを悩ませます。経験がないこと、いつもと違うこと、大きいもの、動くもの、特定の色、例えば「曇り空」「製作用のり」「開いているドア」など、恐怖の対象は様々です。「え?これ?」とびっくりしてしまうようなものが怖くて集中できないことがあります。怖くないことを教えてあげたり見えないところに片づけて安心させてあげてください。
- 聞く準備ができているかどうかでお話を集中してきけるかどうかが決まる場合があります。大事なお話をする前に名前を呼んで様子をみてきく準備ができているようでしたら話しましょう。
- お話に集中できないお子さんの中には、どうしても音声を意味のあることばとして理解するのが難しいお子さんがいます。身振り手振りや手話のようなサインをお話しながら取り入れることで集中できることがあります。
- 聞いたことを理解して「ああ、そうか」とわかるまで、また、言いたいことをことばにして口から出すまでに時間がかかるお子さんがいます。そんなお子さんはきょろきょろしたりもじもじしていても、集中へ向かっている最中といえます。よく様子をみて「集中にむかっているのかも」と感じたら少し待ってあげてください。
- 集中していないように見えて集中しているお子さんもいます。一つのことにしか集中できないお子さんは、しっかりと話を聞くためにはお話をしている人から目をそむけなくてはならないことがあります。話をしている人をじっと見ていると見ることに集中してしまい話が入ってこなくなるからです。「そんな子もいるんだ」と知ってください。一生懸命話を聞いているのに「よそ見をしてはいけません」と叱られるのはつらいことです。
脳をいたわって
忘れがちなことですが、脳をいたわる意識はとても大切です。
- 集中するために働いているのは脳です。脳が疲れていたりエネルギー不足の状態だと集中は難しくなってしまいます。身体がとても疲れている、睡眠不足、ごはんを食べていない、長時間のゲームなどで脳が疲労している、などのときは、集中も難しいですし集中できる時間も短くなってしまいます。
おわりに
集中力アップのコツは以上です。
今日からすぐにできることをまとめてみました。一度で効果が見えなくても何度かためしていると効果があらわれることもありますので声のかけかたやタイミングを変えながらやってみてくださいね。
ひとつでも参考になるコツがあればうれしいです。
子育てがんばりましょうね!